月がとっても



こんなにも悲しくて、寂しくて、虚しくて……悲しい言葉をいくつ並べたって足りないくらいの感情がひしめき合っているのに。



あんなに私は泣き虫だったのに。


(涙の出し方、忘れちゃった……)




そう思ったら、目に見えない穴の淵が鈍く痛んだ。




日に日に、眠れない夜も増えた。

まるで呼吸の仕方を忘れたように、息が苦しくなって、夜中に何度も目が覚めるようになった。


痛みに耐えながら体を起こして、ベッドを降りる。



電気もつけずに暗闇の部屋のなかをふらふらと手探りでギターを探した。

暗いとよくわからないけれど、優しいキャラメル色をしたギター。弦をなぞると、きゅっと小さく鳴る。それだけでなんだか安心する。




私はキャラメルを抱きしめた。

縋り付くように。




そうしていると、少しだけ呼吸がましになった気がした。


涙はやっぱり出てくれないけれど……。