月がとっても



先輩が亡くなったその日から、ずっとお腹の真ん中が痛くてたまらない。

お腹の真ん中あたりに大きな見えない穴が空いて、ずっと塞がらないような。風が通り抜けるたびにじくじくと痛むような。



痛くて、苦しくて、

寂しい……。





『俺は……、

神崎が居なくなったら寂しいよ』


ふいに、前に先輩が私を慰めようと言ってくれた言葉を思い出した。


先輩は私が居なくなったら寂しいと言ってくれた。




『神崎は……?

俺が居なくなったら神崎はなんて思う?』


『私も、寂しいって思います。

あと、きっと泣いてしまいます』


問いかけられて、私も先輩が居なくなったら寂しいと答えた。それから泣いてしまうと。



『神崎はよく泣くからな』


先輩は私の言葉に優しく笑ってそう言った。


私もその通りだと思ってた。



なのに、

どうしてだろう……



「どうして……涙、出ないの……」



先輩が居なくなってから、

涙は、一度も出てこない。