「また雨宮色ですか?本当に好きですねこの画家」


どこか呆れを含んだ笑みに苦笑で返す


「いいでしょ?私の人生を変えた人なんだから」

「あはは、またその話っすか」


3年前


人生のドン底にいた彩加を救った1枚の絵
それを描いたのが雨宮色だ


それからは天才若手作家、雨宮色の大ファンなのだ


「それより晩御飯いきませんか?」

「それよりとは何よ!………晩御飯は行くけど」


菊地はどこか意地悪そうに笑った



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「会いたいなぁ~」


軽くお酒の入った彩加はやや危なげない足取りで帰り道を歩いていた

苦笑しながら隣を歩くのは菊地
酔うと会いたいといい続ける彩加を見るのもいつものこと


「はいはい。そのうち会えますよ」

「適当なこというなぁ~キクチー」


彩加のアパートの前の公園
そこまで来て彩加は菊地を振り返る


「ありがとう、送ってくれて。じゃあ、また撮影でね!」


笑顔でアパートに返って行ってしまう彩加に菊地は溜め息をつく


「やっぱ………家の前まで送らせてくれないんですね、先輩」