暫くするとスタジオに人が入り挨拶や手順を確認する声が交わされる
「はい。じゃあ、撮影始めます。よろしくお願いします!」
「お願いします!」
彩加はカメラを構える
こちらを見つめるモデル
レンズを通して彩加もモデルを見つめる
レンズの向こう側、彼の、彼女の魅力を最大限引き出すために
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「お疲れ様でーす。これで撮影終了でーす」
「ありがとうございました!」
撮影を終えてどこか緩んだ空気が彩加は気に入っている
アシスタントの菊地がコーヒーの入った紙コップを手渡して来た
「あっ、ありがとう」
「先輩、何か良いことありました?」
「えっ!わっわかる?」
撮影が終わり、気が抜けたのは彩加も同じ
先程の雑誌のことが頭を過り、思わず頬が緩んでしまったようだ
少し視線の高い菊地をチラリと見れば優しいが甘さのある笑みが返って来た
「わかりますよ、先輩のことなら」
「タハハ、ちょっとねぇ」
「もしかしてコレですか?」
誤魔化そうと思ったが付き合いの長い菊地にはバレバレだった
菊地が掲げたのは本屋で購入したあの雑誌
スタジオに入った時にカバンと一緒に机の上に放置していたのを見られたようだ

