少し濡れてしまった優の紺色のタオルを、

膝にかけていたら、

白石くんが私の膝から、

そのタオルを取ろうと手を伸ばした。


私は、膝のタオルを両手で押さえた。



「あ、だめ。

このタオルは......貸せない。ごめん。

ちょっと待って......」


私は、ポケットからハンカチを取り出し、

白石くんに差し出した。



白石くんは、少し不思議そうな顔をした。



「ハンカチじゃ、汚しちゃうからいいよ。


そのタオル、もしかして彼氏の?」




「えっ......」


白石くんを見ると、真剣な顔をしていた。



黒髪の短髪、小さな顔、

切れ長の目は私をじっと見つめていて、

「彼氏じゃないよ.......」と、言うと、


はははっと、目を細めて笑った。



「遠山さん、彼氏いないんだ」


私は、頷いた。


「じゃあ......俺が彼氏になろうか?」



「は、はあ?」


私は、思いっきり白石くんを睨んだ。



「冗談だよ!遠山さんの気持ちを待つよ」



待つ......?



「入学式の時から気になってたんだけど。遠山さんのこと」