優しい君に恋をして【完】








私は急いでアルバムを閉じると、

胸の前にぎゅっと抱え込んだ。




優はそんな私を見て、呆れたように笑うと、


ローテーブルにペットボトルとグラスを置いた。



そして、窓際の机の前に立つと、


黒い腕時計を外した。






本棚の前からその姿を横から見ていたら、


なぜかドキドキしてしまい、


胸に抱えたアルバムをぎゅっとした。



優は腕時計を外すと、こっちを向いて、


私の前まで来ると、


アルバムに手を伸ばしてきた。



私はアルバムを抱えたまま、優から一歩さがり、



首を振った。




「見てもいい?」




そう片手で手話すると、優は首を傾げて、



「見たいの?」と聞いてきた。




「うん」と頷くと、優は下を向いて笑って、


私をそのままにして、



ラグに座り、ベッドに背を持たれた。




私も優の隣に座り、膝の上でアルバムを開くと、


さっきの続きからまた一枚一枚じっくり見始めた。



優は写真を見ることなく、


体を起こして、ペットボトルを持ち、グラスにお茶を注いでいた。




写真の中の優は、いつもニコニコ笑っていて、


お兄さんに抱っこされている写真ばかりだった。



しばらくめくっていくと、耳に機械をつけている写真になった。



こんな、赤ちゃんのころから機械をつけていたんだ......




私は優の肩を叩いた。



「これはもう 手術した後?」



そう聞くと、優は写真を覗き込んできて、首を振った。




「これは まだ両耳補聴器をつけているころだから。


手術は この後だよ」


そうなんだ......




ゆっくりとページをめくっていくと、



病院の前でお母さんに抱っこされている写真になり、



そして、


衝撃的な一枚が目に入ってきて、




思わず、片手で口を押さえた。