部屋に入る前に、

一度立ち止まってから、そっと中に入った。



優は私のバッグと自分のリュックを、ベッドの脇に置くと、


「座ってな」と言って、


また部屋から出て行ってしまった。




座ってなって言われても.....

入ってすぐのところで、


広い部屋をぐるっと見渡すと、


濃いグレーの布団が、ベッドの上から少しずれ落ちているのが見えて、


思わず目をそらした。



ベッドの前には深緑色のラグ、その上にこげ茶色のローテーブル。



窓際の細長いこげ茶色の机の上には.....なんだろう.....



机に近付いてみると、机の上には

パソコンとたくさんの画材道具が置いてあった。


机の横の棚には、何冊もいろんな大きさのスケッチブック


上の棚の紙を見ると、賞状が何枚もそのまま重なっていて、


棚と机の間には、何枚もポスターのような大きさの紙が丸められて無造作に立てかけてある。


絵を描くのが好きなのかな……



棚の隣の大きな本棚に目をやると、

一冊の本が目に留まった。


あれ……これって、さっき本屋さんで優が見ていた美大の本だ。




なんだ、持っていたから買わなかったんだ。



やっぱ、この大学を受けようとしているのかな……



そのまま本棚の下の方を見ると、アルバムのようなものが何冊かあって、



一度入口の方を見てから、

そっと一冊だけ取り出し、開いて見ると、



かわいい赤ちゃんの写真がたくさん貼られているのが見えた。




わぁ……これって優の赤ちゃんの頃の写真だ……




女の子みたい……超かわいい!


かわいいかわいいと、一枚一枚見て、次のページを開こうとしたら、




「なにしてんの」



優がペットボトルと、二つ重ねたグラスを持って、


部屋に戻ってきた。