駅ビルの中にあるファストフード店でお昼を済ませ、
駅の外に出た。
帰り優の家に行くと思っていたから、
今朝は、自転車じゃなくて、駅まで歩いた。
バス停に行くと、ふと、
駅ビルの1階にある小さなケーキ屋さんが目に入った。
そうだ、初めて家に行くんだ......
私は優の肩をトントンと叩くと、
「優のお母さんって、甘いもの好き?」と手話をした。
すると、優は「甘いもの?」と首を傾げてから頷いた。
「ちょっと待ってて」そう言ってケーキ屋さんに走ると、
自分の財布とにらめっこして、ケーキを5個買うのは断念して、
ロールケーキを買った。
保冷剤を入れてもらうと、
紙袋を大事に持ちながら、バス停に戻った。
「何買ったの?」
優しく微笑みながら聞いてきた優に、
紙袋を持ち上げて見せた。
「ロールケーキ。お母さん好きかな......」
優は私の頭をポンポンと撫でて、
「気を遣わなくていいんだよ」
そう言って、紙袋を持つ手と反対の手を繋いできた。
しばらくしてから来たバスに、一緒に乗ると、
20分ほど揺られて、
坂の下にある、滑り台とブランコだけの、
小さな公園の前のバス停に降りた。



