どこかな.....
雑誌のところにもいないし、漫画のところにもいないし.....
うろうろとしていたら、
参考書のところで、優が立っているのが見えた。
優は一冊本を手にして、それをじっと読んでいた。
そっと近付いて、何の本を読んでいるか、
表紙を下から覗くと、
優はパタッと本を閉じて、本棚にその本を戻した。
【○○○美術大学】
え......優、大学進学を考えているの?
でも、ここって一般の大学だよね。
そういえば、ろう学校って高校卒業すると、
次はどうするんだろう。
ろう学校の大学ってあるんだろうか。
でも、この本を見ていたということは、
優は、ろうの世界から、出ようとしているのかも......
「買わなくていいの?」
優は、少し笑って頷いて、
私の手を繋いで歩き出した。
歩きながら隣の優の顔を見ると、
何か少し、考えごとをしているような、
そんな表情に見えた。



