「えっ。私の部屋???



ていうか、優のお母さんにもう言ってあるって、


どういうこと?」



お母さんは、驚いている私をちらっと見てから、


また優を見つめた。




「いろいろひどいこと言って、ごめんなさいね......


決して、優くんの耳のことで反対した訳じゃないからね。



そこは、勘違いしないでね。




私が全部いけなかったの。




優くんは何も悪くないのに、本当にごめんなさいね」




ゆっくりと話したお母さんの口元を見つめていた優は、小さく首を振った。



「あすかを、よろしくね」




優は、はっとした顔をしてお母さんを見つめた。




「付き合うことを 許してもらえるんですか?」



お母さんは、深く頷いた。




優はホッとしたように、肩を撫で下ろして、



「大切に します」とお母さんを真っ直ぐ見つめながら、


ゆっくりと言った。







「ありがとう......お母さん」



お母さんは、私の言葉に首を振った。



「優くんのお母さんが許してくれたの。



だからよ」




「優のお母さん?」



「さっきお母さんも帰ってきたところなの。

なんだか話が尽きなくて......


夕飯作るの遅くなっちゃった。



だから部屋で待っていて。

目の前でいちゃいちゃされるのもなんだしね」



お母さんはふふふっと笑って、リビングへと戻っていった。


ふたり玄関に残され、目の前に置かれたスリッパ二つを見つめた。





私の......部屋。






ドキドキドキドキドキ......





ちらっと優を横目で見上げると、優も横目で私を見下ろしていて、


ばちっと目が合ってしまった。




「部屋.....行く?」



恥ずかしくて、小さく手話をしてまた優を横目で見ると、


優はふっと笑って、


「おじゃまします」と言ってぺこっと頭を下げた。





「ど、どうぞ.....」と、手をパタパタさせて上がるように勧めると、



優は目を細めて八重歯を見せた。


優がスリッパを履いたから、

私も後からスリッパを履き、


先に階段を上がると、後ろから優も上ってきて、


丈の短いワンピースの裾が気になって、

何度が振り向いたんだけど、


優は、ずっと下を向いたまま階段を上っていた。





部屋の前に着き、ドアノブに手をかけた瞬間、


心臓の鼓動がまた少し早くなった。




緊張する......



カチャッとゆっくりとドアを開けると、

薄暗い自分の部屋が見えて、



なぜかさらにドキドキしてきてしまった。




電気をつけて中に入り、エアコンのスイッチをつけて、

ドアの方へ目をやると、


優がゆっくりと私の部屋に入ってきて、



そっとドアを閉めた。