あすかは、ベタベタの手をシャツでこすると、
「そうだ!」と言って、幼稚園のリュックが置いてあるところまで走って、
中をごそごそとして、一枚の紙を持ってきた。
「これね、ゆうちゃんからもらった」
小さく折られた青い折り紙を開くと、
中にかわいい女の子の顔が書いてあった。
「あすかを描いてくれたんだって。
ゆうちゃんもう、平仮名書けるんだね。すごくない?
なんて書いてあるの?ママ読んで!」
かわいい文字で書いてある平仮名を読んで、
涙が出た。
【ずっと ともだちでいてね ゆうより】
「わあ!あすかもあすかも!
あすかも返事書きたい!ママ平仮名教えて!」
あすかは、道具箱から黄色の折り紙とクーピーを持ってきた。
「なんて書くの?」
「うんとねー。【あすかが まもってあげる】って書く!
ゆうちゃん男の子たちによくバカにされているから。
あすかがいっつもやっつけてるの。
だから、これからもあすかが守ってあげるって書く!
そうすれば、ゆうちゃん安心するでしょ?」
あすか.....やっつけているって.......
だからいつも園服泥だらけなのね。
きらきらとした、なんの曇りもない澄んだ瞳で見つめてきたあすかに、
親のことで、お友達を思う気持ちを、
押さえ込ませていいのだろうか......と悩んだ。
でも、向こうはきっと、嫌だろうし。
そうだ、
もし、向こうから避けてきたら、
その時、あすかを私が支えてあげればいいのか.....
あすかの方から、離れさせるのは、あすかの気持ちを考えるとできないと、
その時は思った。



