それから何日か後、
成海くんが、血相を変えて店にやってきた。
「どうして、教えてくれなかったんだ」
えっ。
目の前で、怒りに震えている成海くん。
「彼女が、ここに来たこと。
僕がきたら、図書館前で待っていると伝えてくれと言った事。
なぜ、黙っていた。
なぜ、嘘をついた!」
私に大きな声で怒鳴ってきた成海くんに、
トレイを持つ手が震えた。
何事かと奥から店長が出てきた。
「どうした、花ちゃん?」
成海くんは、店長を無視して続けた。
「彼女は、男たちに襲われた。
今、入院している。
もっと早く気づいていれば、防げたんだ。
なぜ、なぜ嘘をついた!!
僕は君を許さない。
一生許さない!!」
そう、言い放って、店を出ていった。
私のついた小さな嘘が、
初恋の人の大切な人を、
傷つけてしまった。
それも、取り返しのつかないくらいの、
大きな傷を。
ずっとずっと、後悔し続けた。
あの時、教えてあげていれば、
こんなことには、ならなかったのに......
ずっとその後悔を、
胸の中に閉じ込めていた。
何年も、何年も。
まさか、あすかの初めてのお友達の両親として、
ふたりと再会するなんて、
思ってもみなかった。



