優しい君に恋をして【完】







必死に手話と口の動きで優に気持ちを伝えた。


「大切なの。



優が大切なんだよ。






そんな、結果がわからない手術なんて......」





涙がこぼれたところで、観覧車が下に着いて、


扉が開けられ、


優に手を引かれて観覧車から降りた。




片手で目をこすりながら、


優に手を引かれ、



しばらくそのまま歩いて、



水族館脇の木陰のベンチに座らされた。



海風に吹かれながら、両手で顔を覆った。





「あすか」





優しく呼ばれて、両手から顔を出すと、


優は私の頬を撫でて、涙を拭った。



「ありがとう」





優はそう言って、優しく微笑んだ。




「あすかのおかげで 俺......



いろんなことに気づいた


自分が いろんなことから


逃げていること


いろんなことを


諦めていること



それを全部


耳のせいにしていることに気づいた





俺はもう 


聴こえる人から逃げて


音を諦めて生きていくのは


やめたんだ





もう一度 音を取り戻して



どんなに機械をじろじろ見られても


ちゃんとつけて


どんなに発音をからかわれても


ちゃんと自分の言葉をしゃべって



俺は 堂々と生きていこうと思う」