幼......稚園???
「幼稚園の頃に 優しくしてくれた女の子がいて
今思うと あれが初恋だったんだと思う
そのぐらいだよ
小学校は普通小に通ったんだけど、
友達もいなかったし
ろう学校は 人数が少ないから
その中で 好きな子はできなかった
だから
彼女はあすかが 初めてだよ」
うそ......
「本当?告白されたことは???」
優はちょっと困ったように、首を傾げた。
「それ、答えないとダメ?」
私は思いっきり両手を優に振った。
「いいや、いいやっ」
うん。これは、聞かない方がいい。
とにかく、彼女はいなかったってことだけで、
それだけで嬉しいから、そこまでにしておこう。
「観覧車には お兄ちゃんと乗ったんだ」
優はそう言って、窓の外を眺めた。
ゆっくりと高くなっていく観覧車。
窓から、海が見えてきた。
お兄さんと乗ったんだ。
「小学校3年生の頃 お兄ちゃんが東京の大学に行く前
お兄ちゃんに連れられて
二人で水族館に行って
最後に観覧車に乗ったんだ
俺 お兄ちゃんと離れるのが嫌で 観覧車の中で泣いて......
そしたら
【強くなれ】って言われたんだ
俺も東京で頑張るから 優も頑張れって
優の耳は 俺が一生診ていくから
必ず 難聴の人の役に立つ耳鼻科医になるからって
泣いている俺に 誓ってくれたんだ」



