優しい君に恋をして【完】






海の見える展望デッキで、


お昼を済ませ、


ガラス張りの廊下を歩いていたら、


優が立ち止まって、外を指差した。



差した先に目をやると、大きな観覧車が見えた。



「高いところ 大丈夫?」



あんなに高いところに行ったことないからわからないけど、


多分大丈夫だと思って、私は頷いた。






「水族館見終わったら 乗ろう」





そう言って、また歩き出した。



水族館だけじゃなくて、観覧車にも乗れるんだ。



今日は、ふたり一緒の思い出がいっぱいできる......




デートって、こんなに幸せなんだ。



夏休みも、いっぱい一緒にいられたらいいのに......



次は、いつデートができるんだろう。



そう思うと、辛くなる。



ダメだ、ダメだ、



今日は、一緒にいられるんだから、次のことを考えるのはやめよう。


一緒にいる今を、大切にしよう。



そう自分に言い聞かせて、



また水族館の続きを、

優と手を繋ぎながらゆっくり見て回った。


そしたらまた、


優ばかり見てしまって、


笑いながら怒られて......




水族館を見終わると、外に出て、

観覧車の方へと歩いた。




水族館も観覧車も、私は初めてだけど、

優は来たことがあるんだろか......



そういえば優って、今まで彼女がいたんだろうか......




こんなにかっこいいから、

同じ学校の子とか、


電車の中とか、


告白されたりしたんだろうな......


他の子と観覧車とか、乗ったりしたことあるのかな......



観覧車の列に並んで、


他のカップルを見て、ふとそんなことを考えだしたら、



ひとりで嫉妬し始めてしまって、


優の手をぎゅっと握った。




優は少し不思議そうに私の顔を覗き込んで、




その時、観覧車に乗る順番が回ってきた。