焼きそばを炒め始めた頃、雅人さんの声が聞こえた。


「隆裕遅いー!」


と言うと隆裕は少し目を見開いた。


「あ、…うん。ごめんね」


「焼きそば、食べよ!」


「うまそうな匂い…アツも食べてないでしょ、一旦休みなよ」


アツくんは相当暑かったらしく頷くと雅人さんに鍵を借りて車の中で涼み出した。



「…さっき」


「ん?」


「さっき雅人さんに声かけられて、ちょっと構えちゃったんだけどね」


隆裕は一気に炭酸飲料を煽った。



「…俺、多分今まで勘違いしてたわ」


七海たちと笑い合う雅人さんを見る。



「そっか」


「まぁだからと言って秋穂は渡さないんだけど」


「そうして下さい」


お互いプラプラしていた手が重なった。