「昔さ」
ろくにこっちも見ずに隆裕が喋り出す。
「昔、くるみがよく家に泊まりに来てさ」
「……」
隆裕の声は柔らかくて少し切ない。
「秋穂、お母さんに電話は?」
「もうしたよ。大丈夫」
「…そっか。わざわざありがとね」
自然と繋げられる手に少しドキドキした。
「腹減ったわ…お粥あるんだっけ?」
「あ、うん。温めてくるから、隆裕は着替えてきなよ。制服はちょっと」
隆裕は自分の格好を見て苦笑いする。
「秋穂は大丈夫?」
「大丈夫ですぅ」
「はいはい。…前俺のだとダボダボだったし、くるみに言ってみるね」
立ち上がって少し頭をくしゃっとされた。

