「秋穂」
「なに?」
振り向き様に、ぎゅっと抱きしめられた。
「これ以上離れたらだめ」
「…うん」
あ、やばい。のぼせてきたかも。
頭がふわふわしてきた。
「?秋穂?」
「んー…あつい」
「ちょっ…大丈夫」
そこで完璧に目を閉じてしまった。
じりじりと暑いような感覚に、
涼しい風がきた。
真っ暗闇の中にただ一人隆裕が立っている。
『俺、菜々子ちゃんが好きになった』
え。
まって…?
なにこの夢。
口を開こうとしても、しゃべれない。
スタスタと去っていく隆裕。
行かないで。
こんなのもう…いやだから。
ぱっと目を開く。
そこには自分の部屋の天井があった。
涼しい風を感じて、横を向くと、隆裕が団扇を仰いでいた。
「大丈夫?」
「うん…まあ…」
なんだか怖くて、そっと手を伸ばした。
隆裕のほっぺをぐいっと掴む。

