「とにかく、今から会えない?
澪ちゃんの傘も返したいし、話もしたい」
落ち着いた世那の声に
あたしはただ、呆然とするだけ。
「澪ちゃん、待ってて」
「………えっ?」
あたしがそう聞き返したときには
もう、電話は切れていた。
──────バタンッ
玄関のドアが閉まる音がして
床に座り込んだままのあたしは、熱くなったケータイを
力なく、手元から落とした。
家に来たのは世那で、
世那はすぐにあたしの元へ駆け寄った。
「澪ちゃん。傘………」
スッと目の前に差し出された折りたたみ傘を、あたしは見つめた。
綺麗に巻かれたナイロン生地は、シワも無い。
「さっき、ALICEの奴らと街で会って。
前から面識はあったから、飲みに行くことになったんだ」
「そしたら、雨が降って来て………」
世那は、話すのを止めると、あたしの前にしゃがんだ。


