煙草とキス




「うん、よろしく!
あ、たしか明後日シフト同じだよね?」




「はい、たぶん…」




「じゃあ、明後日ね。では、おやすみなさ~い」




「おやすみなさい」






ひかりさんは、あたしに笑顔で手を振り



出口へ向かう長蛇の列に入り込んで行った。


あたしは、その後ろ姿に手を振った。






だけどあたしは、見逃していなかった。





ひかりさんの目が、すごく真っ赤で、泣いた後の様だったこと………………。
















───────カチャッ。





誰もいないホール裏のドアを、あたしはそっと開けた。




そのドアには、大きな


“STAFF ONLY”の文字。





でも、このライブハウスのスタッフはどこかしらヌケてて




こういう所から、ファンが侵入してバンドマンに接近する……






なんてことは、考えてもいないらしい。





まあ、あたしは“ファン”じゃなくて



ある意味、関係者だけど。






「ふぅ~…今日も成功」




……別に、スタッフも誰もいないから



このライブハウスの場合は、成功も失敗も無い。





でも、とりあえず胸を撫で下ろしておいた。