煙草とキス





メイの、透き通るような………





だけど、芯があってパワフルな歌声が、ホール内だけでなく



その外にまで、響きわたっていた。






そんなメイの歌声に翻弄されるかのように



人々は皆、メイをひたすら見つめる。








ステージに立って



何か、想いをはせるように……






ひとつひとつ、言葉を噛み締めて歌っているように聞こえた。










時折、胸に付けた赤い薔薇を型どったピンバッジを



メイは大事そうに、ぎゅっと握りしめる。





その意味がすごく気になった。




でも…………。






今はそんなこと、誰も考えちゃいないだろう。






心惹かれる歌声を、とびっきりの笑顔で発するメイの姿は




強く、立派にも見え………





笑顔の裏にある“何か”で、酷く心を乱しているようにも見えた。