あたしは、煙草を一本だけ箱から抜き出し、快斗に箱を渡した。
「あれ~未成年者はダメじゃないっけ?」
真剣な顔をして嫌味を言いながら
快斗は、あたしの髪を片手でクシャッと乱れさせた。
「来月で20ですから」
「あ、そうだっけ?」
あたしを見下ろしながら、快斗はあからさまに首を傾げた。
快斗は、何かの記念日とかをマメに覚えるような性格ではない。
だから、あたしの誕生日さえ覚えていないだろうし
2人が出会った日や、付き合い始めた日も、分かっていないだろう。
でも、別にあたしは
誕生日や記念日を、快斗に覚えて欲しいなんては思っていない。
だけど………
あたしに対する愛だとか、
2人が付き合うときに交した、たったひとつの約束だけは
忘れてほしくなかった。
あたしの存在も、全部─────


