─────「じゃ、帰りは裏口な」
快斗は、煙草に火を着けながら言った。
「分かった。じゃあね」
あたしがそう言うと
快斗はあたしに軽く、またキスをして
雨の中を、走ってライブハウスへ戻って行った。
快斗がボーカル&ギターを務める、
ロックバンド【bitterlips】。
この辺りでは結構有名で
各地のライブハウスからも声が上がってきている。
最近は、
ほとんどのタイバンで勝ってるし…
音楽雑誌にも、名が上がり始めた。
普段からクールな快斗は
ライブでも、他とは違うオーラを放っている。
そんなオーラが客を虜にするのか
快斗は、とても人気がある。
特に、女のファンは沢山だ。
それでも快斗は
あたしだけを見つめる。
あんなに人気でモテるなら
あたし以外の女と寝ても、おかしくないのに……
なのに、ライブ前にも必ずあたしと会ってくれる快斗が
あたしは本当に、好きだった。


