煙草とキス





あたしは何故か、



その人から目を離せなくて………






彼女を見つめながら、ゆっくり近付いた。










「……大丈夫ですか?」






自分でも、驚いた。





見知らぬ人に声を掛けるなんて



今まで一度も、したこと無かったのに。






だけど、彼女の姿を見たら




何故か 体が勝手に引き寄せられた気がした。








「傘……どうぞ」




あたしがそう呟くと


ようやく、彼女が顔を上げた。




雨で濡れた髪が、白い顔にまとわりついている。




目元の濃いメイクもすっかり落ち、なんだか大変なことになっていたけど



すごく、綺麗な顔立ちだ。








「えっ……………?」





彼女に自分の傘を差し出すと



彼女は、驚いたような表情をした。





「あっ、突然すみません!
でも…、ずぶ濡れで座り込んでたから…」





そう、苦笑しながら話すと



目の前の彼女は、すくっと立ち上がった。