でも、早く帰っても
快斗が家に帰って来ないんだったら
意味ないな。
「だって、グリレコのこととか
いろいろと聞きたいし」
電話じゃあ、なんか嫌だ。
そう付け足すと、快斗は笑った。
「そう?俺は今にでも言いたいんだけど。言っちゃダメ?」
「あまりまえでしょ」
「ふはっ。そんなに楽しみ?」
「あったりまえでしょ!」
そう言ったのと同時に電車が来て
あたしの声は遮られた。
でも、電話の向こうで、快斗はケラケラと笑っていた。
「久しぶりに歩いて迎えに行くよ」
押されるようにして電車に乗る。
一瞬、快斗の声がブレたけど
ちゃんと聞こえた。
快斗からの、さりげない
嬉しい言葉。
「……うん。よろしく」
あたしは、口元を緩めて頷いた。
電話が切れた後は
これまでにないくらい、後味が良かった。


