煙草とキス





────結局、新曲はちゃんと



聴き入ることができなかった。






でも、ちゃんと分かった。


快斗が最高のプレゼントをくれたのだと。










「私まで、泣けたな……」





ライブのアンコールは、3曲だった。



だけど、あたしは泣いてしまっていたから、まともに聴けていない。






「澪ちゃん…幸せな誕生日だね」







穏やかに話したひかりさんは


両手で目頭を押さえていた。





その左薬指には


どういうわけか、また指輪がはめられている。



けど、その理由を聞くほどの余裕は、今のあたしにはなくて…


ライブの興奮が冷めていないファンたちを横目に、あたしは目を腫らせて歩いていた。






すると、突然ひかりさんがあたしの顔を覗き込んで笑った。




「もう!澪ちゃんらしくないよー?
誕生日なんだから、もっと笑わなきゃ!」





そう言ったひかりさんは


あたしの頬を両手で引っ張って、無理矢理口角を上げてきて。




ケラケラと笑う、ひかりさんらしい優しさにまた涙が浮かんだ。