煙草とキス






  その指に絡まる薔薇だけで
  赤い糸なんて要らない
  心が花びらに溺れなければ──










薬指の薔薇が


赤い光に照らされ、輝いていた。







だけど、その輝きは滲む。









快斗が、あたしを見ている気がした。



でも、あたしは見れなかった。




歌を聴きたくても、止まることを知らない涙が許してくれなくて


数えきれない人々の足下で、あたしは泣き崩れた。









ひかりさんは、気付いていただろう。




それでも、泣き崩れたあたしを、無理に立たせようなどとはせずに



ただ、頭を優しく撫でてくれた。






周りから見れば


bitterの数少ない新曲バラードに泣いた、熱狂的ファンという感じだろうか。





そう思われても仕方ない。






だって、本当にあたしは




バラードに泣いた、bitterの熱狂的ファンであるのだから。