そしてスタンドからギターを取り、快斗が肩に掛けると、他の3人も自分の準備をし始めた。
「今日は最高の日になるはずだから。
じゃあ…、新曲『薔薇』」
快斗は呟くようにそう言うと
ステージへ降り注ぐ、赤と白の照明を仰いだ。
そして、ベースのみの前奏が始まると
ファンの心は、あっという間に彼らに奪われてしまい、歓声の波は今日一番の大きさだった。
すると────
ベースの一音が伸びたまま、暗転したと思ったら
パッと明るい白色照明がステージ全体を照らし出して、bitter特有の、変拍子が続くメロディーが響き出す。
そして、快斗のいつも以上に艶やかな声がそのメロディーに入ると
あたしの体中には、何故か鳥肌が立った。


