煙草とキス




ライブ開始まで、あと5分をきった。


そろそろ客の落ち着きもなくなって、ざわつく声が一段と大きくなった。





無口になったひかりさんは



ずっと、暗いステージを見つめている。






「はやく生快斗が見たいよ~!」


「あの声が聴きたい!」


「徹平は超クールだよ」


「えー、やっぱ龍也じゃない?」






どんどん耳に入ってくるファンたちの言葉に、あたしの顔は、自然とほころぶ。





なんだか、自分が言われているような気分になってしまって。




みんな、この日をずっと


待ち望んでいたんだなって思うと、すごく嬉しく思えた。








「……まだかな…」





ひかりさんの呟きが聞こえて、あたしはひかりさんの顔を覗く。









その瞬間だった………