もう、あたしと快斗に言葉は無かった。
その指輪を快斗はスッと手に持ち
あたしの左薬指に、ゆっくりとはめた。
あたしの涙は、絶えない。
泣くのは、疲れる。
だけど今はこの涙で
溺れ死んでもいいって思うくらい、この涙はものすごく温かくて
あたしの頬から首筋まで伝っても、冷たくなることはない。
何の濁りもない透き通った涙のような気がするのは、あたしだけじゃないだろうなって思わせてくれた。
薬指で光るこの赤い薔薇を
濁りのない涙は、あたしに見つめさせてくれない。
でも、それさえ嬉しく感じて、あたしは快斗のジャケットを強く握りしめたまま、泣いてた。
そんなあたしの涙を
笑いながら拭いてくれた快斗は、無邪気な子供にも優しい大人にも見えて。
この涙が温かい理由を、見出せた。


