煙草とキス






溜っていた涙が水道の蛇口をひねったような勢いで、一気に流れる


……というか、溢れてきて、自分ではどうしようも出来ないような感覚だった。







「快斗」





そう、何度も何度も口にしたけど


実際は声すら出ていなくて、ただただ両手を伸ばしたまま。




でも、震える両手を、あたしはちゃんと見つめることができた。











「本物の薔薇より、ずっと見てられるだろ?澪は…何でもジッと見つめる癖あるから」









あたしの両手には、真っ赤な薔薇の花びらがたくさんあって



その中で埋もれることなく、キラキラと光り輝いている指輪が見えた。





その指輪には、本物の花びらよりも深くて真っ赤な薔薇が型取られていて。




リング部分はツタのようになっている。






その指輪は、薄暗いホールの中でも異常なほどにキラキラと光っていて




涙でぼやけると


より一層輝きを放っているように見えた。