なんで快斗は、あたしがそんな言葉を聞いたら泣くって分かってて、そういう風に言うかな……。
「ほんと、頭おかしい…」
快斗の煙草の匂いが
あたしの鼻に触れた気がした。
けれど、実際煙草は無くて
幻なんだって思った。
────そのとき。
革ジャケットのポケットに快斗が右手を突っ込み
何かを握ったまま、あたしに向けた。
「な、何?」
「んーとね……愛?」
「は~っ?」
あまりにも快斗の目が真剣だから
言葉の無邪気さに、あたしは本当に大爆笑してしまいそうで、堪えることに一生懸命だった。
「笑い堪えてねぇで手、出して」
「…愛なら、両手必要かな?」
「あたりまえ」
2人でクスクス笑いながら
あたしは両手を出して、快斗はその上に握った拳を伸ばした。
「俺、キザだな」
快斗はそう呟いて、ゆっくりその握った手を開く。
次の瞬間、あたしは─────


