煙草とキス





ズラッと並んでいる人達が


みんなあたしと世那を目で追う。





“ざわつく”のを通り越して、みんなポカンとしているとでも言うのだろうか。



静まりかえったこの変な空気……。





あたし、一体何やってるの……?









そのまま走って入ったところは


オープンしたら、客が流れるように入る正面入口ではなくて



その入口前に並んでいる人々から、見えないところにある、スタッフ用入口だった。







「えっ、あの…えっと……世那?」



ホールに入る前の、ロッカースペースのところで世那が突然止まった。





「ごめん、意味不明っしょ?
オレもよく分かんねぇからさ…」




深く被ったキャップをとると


いつもの世那。



すこし息が上がっている。






「てか、ほんとに意味不明!
なんで世那がここのスタッフなの?
なんであたしだけ入ってるわけ?
オープンまで…あと30分以上あるよ」





あたし以外の客は、誰ひとりいないロッカースペース。




良く言えば、1番のり。



悪く言えば……ズル?