そのときだった。
「メイ、ここに居たんだ。
早く帰るぞ!俺ら、結局向こうの方から出てファンサービスすることになったから」
ドアの向こうから出てきた彼は
メイのバンドメンバーだ。
たしか……ベースをやっているはず。
「奏太…待って」
急に彼に手を引かれたメイは、立ち止まってそう呟いた。
でも、奏太と言う彼は
立ち止まるメイの手を、グイッと引いた。
「ダメ。もうみんなくたびれてる」
「でも待ってよ、奏太!」
そう言いながら、メイは振り返って
あたしを何度も見てくる。
さっきまでの笑顔は、まるで無い。
彼は相当急いでいるらしく
手を引かれるメイは、何度も足をもたつかせていた。


