煙草とキス




「今、スタッフの子が、メイに会いたいって人がここに居るって教えてくれて…っ」




メイは、ライブ終了後、すぐに来てくれたのだろう。




まだ息は上がっていて



汗で濡れた髪や、真っ赤な頬が、ライブハウス内の熱気を物語っている。






「すぐに、澪ちゃんだって分かって……
思わず猛ダッシュで来ちゃった!」





メイは、瞳をキラキラさせながら


笑って地面に座った。





「落ち着いてからでも良かったのに。
メイ、汗が尋常じゃないよ?」




あたしは、あまりにも速く脈を打つ心臓が破裂してしまいそうで



苦笑しながら、煙草の火をもみ消した。






「汗なんて、すぐに乾くよ。
だって早く来なきゃ、ファンが駆け付けて澪ちゃんと話せなくなるかもしれないもん」




「じゃあ、あたしが出待ち1番乗り?」




「YES!」





ラメの付いた長いまつげを、瞬かせながらメイは笑う。




そのメイの笑顔が



強がるあたしの胸を、少し締めつけている気がした。