「ふぅ……」
錆びついて、十分閉まっていないドア。
そのわずかな隙間から
メイの声が聞こえていることを
あたしは、知っていた。
そして、自分の胸が
ドキドキと高鳴っていることも。
だからあたしは
自分を落ち着かせようと、バッグの中から快斗の煙草とライターを取り出した。
そして、1本だけ抜いて、ライターの火をそっとあてた。
初めて吸う、快斗の煙草。
『普通じゃ売ってねぇんだよ』
そう言って快斗は、外国産の煙草に切り替えたのだ。
煙を吐くと、甘い香りとは裏腹に
口の中はビターな味でいっぱいになる。
あたしは、指に煙草を挟めながら
錆びたドアに寄りかかった。


