すると、ぜーはー言っているあたしを見てなのか何なのか
スタッフが、あたしに話しかけてきた。
「もしかして……ALICE狙いですか?」
「そ、そうですけど…?」
「あっ、いや……。実は今日のお客さん、ほとんどがALICEファンばっかりで。タイバンなのに、ワンマンみたいなんですよ」
「はあ」
「それで今日は、出待ちのファンが大勢いると思うんです。
もし、良かったら……
関係者入口の方へ案内しましょうか?」
「えっ、でも……」
「今日はあまりのファンの多さに、出口の変更をしたんです。
なので、変更場所に来る人は少ないと思います。本当は秘密なんですけど」
ベリーショートの個性的な髪型をした彼女は、笑いながら話した。
そして、スタッフTシャツの袖を捲り
あたしの前を歩き出した。
「そこに行けば、音漏れで聴こえるかな。
ALICEはリハから…外にまで響かせるので」
そう言った彼女の笑顔は、かわいい。
あたしも思わず、口元を緩めていた。


