「…まだ、快斗を覚えているのか」
唇を噛みながら、世那を見た。
ちょっと、戸惑いながら。
「そっか……。
澪ちゃんがそれで良かったなら…」
「良くなかったよ」
「えっ?」
そしてあたしは
また戸惑いながら、世那の言葉を遮った。
「世那の言葉聞いて…後悔した。
世那は全部、分かってる。快斗の気持ちも、メイの気持ちも」
「いや、オレは……」
「あたしより分かってる」
店内に流れる音楽。
2人の沈黙。小刻に揺れる唇。
あたしも世那も、うつむいた。
そのときだった。
「……覚えてるよ、メイは…」
『覚えている』
その言葉の意味が、何を意味しているか。
自分で言ったのに
世那の呟いた言葉を聞いて
あたしの頭の中は、何も知らないかのように真っ白になってしまった。


