煙草とキス




そんな世那と、あたしはホッと安堵のため息をつきながら笑った。





すると、世那は何かを思い出したのか



レジの方へ行き、何やらピンク色の紙を1枚持ってきた。





「そういえばさ……
この前、メイが店に来て。もし、澪ちゃんが近い内に来たら渡してくれって」




「………メイが?」




あたしが聞き返すと



世那は頷いて、その紙をあたしに手渡してくれた。





「今週の金曜、下北のライブハウスでタイバンの空きが出来て、急にオファー掛ったらしいんだ」




世那は、あたしに話しながら、ラックの整理をしている。



あたしはただ黙って


そのチケットを、しばらく見つめた。







「メイと……話したのか?」




何かを察したのか、世那はあたしの顔を覗き込む。





「話そうとしたけど……。
快斗に、いきなり電話切られた」



「え?……なんで」




「お前は知らなくていい…って」






あたしはそう呟きながら



“新人バンド特集!”と、大きく見出しの付いたラックのCDに手をやった。





この上半期、メジャーデビューしたバンドのCDがたくさん。




インディーズ時代から


知っていたバンドも中々多くて。




ちょっと驚きながら、それらのCDをジッと見つめた。