煙草とキス





でも…………待てよ?



快斗は、記念日とか、そういうのをいちいち覚える人じゃないし。




この前だって


あたしの誕生日も分かっていなかった。





そんな快斗が、あたしの誕生日に何かしようなんて………










「あー、誕生日だったっけ?」






やっぱり、ありえない。




少しばかり、期待してしまった。



分かってたはずなのに。






「……その2日、何かあるの?
珍しいじゃん、予定開けろなんてさ」




ちょっと、ふてくされたような表情で快斗の目を見た。



でも、快斗は黙ってアイスコーヒーを飲むだけ。





「気になるよ、そういうの」




裸足で軽く快斗のふくらはぎを蹴ると



快斗はあたしの腕を、急にグイッと引き寄せた。








「お前、その日泣くなよ?」









あたしの耳元で、快斗はそう言った。




そして、首筋に口づけをする。






「泣くって……?」



「その日になんなきゃ、分かんねぇよ」





ポタリとこぼれ落ちた



アイスコーヒーと、カップの水滴。





快斗に抱き締められる


あたしの素足に落ちた水滴は、ものすごく冷たく感じた。