「……澪。もう泣いてねぇで、帰れ」
更に隙間を狭く閉められた向こうから、間違いなく、龍也の声がした。
「えっ、龍也?」
「……なんだよ」
あたしが聞き返すと、面倒そうに龍也は言い放った。
何故か、ドアを小さく開けながら。
「いや……ごめん、何でもない」
『快斗は?』
そう聞こうと思ったけど、あたしは言うのをやめた。
多分、快斗は
あたしのことも、自分のことも
落ち着かせたかったのだろうから。
「じゃあ……帰る」
「朝には快斗も、帰ってると思うから。
抱くなら快斗が寝る前にしとけよ」
「馬鹿!」
龍也はそんな冗談を
ドア越しにふざけながら、真面目くさった声色で言った。
あたしはそんな龍也に、じゃあねと言って外へ出た。


