【短編】もう少しだけ




「歩くの速いんだけど?」

「えぇ? あ、ごめんね?」



そう言って今度は立ち止まる。


変なの。
どうかしたのかなぁ?



少し赤く染めた頬を隠すように俯きながら、
そっと差し出した掌。



「…いい?」

「え? あー、うん」



ドキッとした私は、それを見せない様にその手を握り返した。


でも強くは握れなくて。


掌から心臓のドキドキが伝わったらどうしよう……とか。
汗ばんでないかな? とか。

頭の中は、そんな事ばっかりで真祐が変だなんて事は忘れてしまってた。



たまに寄る公園の前で
『寄っていい?』
と言われ、頷いた。


ベンチに座ると、走ってジュースを買いに行ってくれる。



私の好きなグレープジュース。
手渡されたジュースを受け取った。