【短編】もう少しだけ


真祐って遊んでたの?
そんなの知らない。


どうして、手を繋ぐだけでも赤くなったの?

キスだって半年もしようとはしてこなかったよね?

遊んでたんなら慣れてるよね?

だから…嘘だよね!?


遊んでたなんて、嘘……
じゃなかったのかな?



走って走って探し回った真祐は、
階段に座ってた。

隣の綺麗な女の子の肩を抱いて。



「ま…ひろ?」



鼻の奥がツーンとして、目の前の視界が少し歪む。

ゴクッと生唾を飲み込んだ。


隣に向けられていた視線が、ゆっくり私の目を捉える。

その目は、今までみたいな優しい愛くるしい瞳なんかじゃなく、
冷たい睨む様な目だった。



「今更、何か用?」



冷たく言い放った真祐の言葉が、
心臓に突き刺さったかと思った。

時が止まったかと思った。

周りの声が全然聞こえなくなって。

瞬きすら忘れて。

何秒が何分にも何時間にも感じるくらい長かった。


目を逸らし、小さく首を振って真祐に背中を向けて歩き出す。


さっき瞬きをしなかったからかなぁ?


急に瞬きの回数が増えた。

それに、どうしてだろう。

可笑しくもないのに笑ってる。



なのに……



ポタポタと大粒の涙が零れてるんだ。
変なの。