【短編】もう少しだけ



放課後、片手にゴミ箱を持ち、
もう片方の手を肩に当て、
首をポキポキと左右に鳴らしながら歩く。


真祐はキスしたかったのかな。


でも今更だよ…ね?
今までこの関係だったのにさ。

急にそんな、無理だよ。

どうすればいいんだろう。


はぁー、私今日こればっかりだぁ。
教室に入ると真祐が、私の机に腰掛けて居た。



「真祐?」



驚き、名前を呼ぶのに返事はない。
逆光で、真祐の表情が見えない。

そばに寄った私が見た真祐は、哀しそうな顔をしていた。



「ど…うしたの?」



目を合わし、ポソッと呟いた。



「茅乃……俺とキスするの嫌?」

「へっ?」

「ねぇ、嫌?」



驚く私に聞き返す。



「嫌とかじゃなくて……えっと」

「なら、してもいい?」

「え、あ……別にいいけど」



可愛くない言い方だとは思う。

だけど、今までこんな感じだったし。




それに

『キスしていい?』

って聞かれて

『して』

なんて答えれる程、慣れてもいない。