【短編】もう少しだけ



そう思った時には、唇の前で両手をクロスさせ、



「ストップ……」



そう呟いていた。

上目遣いで見上げた真祐は、困った顔。



「あ、ごめ……。…驚いた?」



一瞬見せた困った顔を取り繕うかの様な、笑顔。

真祐が笑って言うから、



「何? 驚かせたかっただけなのー!?」



私も冗談で返した。



本当は凄くビックリして。

心臓がドキドキと大きな音をたてて。


どうしていいかわからなかった。



公園から家までの残りの距離が凄く長くて、
いつもよりテンションが高くなってしまう。

多分、それは私だけじゃなく真祐も同じ。


手も繋がず、その離れた少しの距離が、
とてつもなく遠い距離みたいで
凄く寂しい。




家に帰ってからもドキドキは治まらなくて。

顔も火照ったままだし、指先なんて震えちゃってるし。

頭の中は、さっきの近づく真祐の顔のリピート。


いつもの犬じゃなく、男だったな。

可愛いんじゃなくて、かっこよかったな。

真祐って大きいんだな。



そんな事を思い出しては顔を赤くしてしまう。