「オハヨウ。大神君。」
「・・・おはようございます。所長。」
朝の習慣をこなしてから、俺はコーヒーを飲むために薄汚れたキッチンへと
向かう。本当は不味くて飲めはしないのだが。油が染み付いた汚いドアを開けると、同じ研究所員の井守アメミズが
できあがったカップ麺をもって出ていこうとしている。俺に気付いた井守は話しかけてきた。「スイマセン、ケンシ
さん。肉、切ったけど捨てちゃいました。」マスクで目以外を覆った顔を申し訳無さそうにうつむかせている。
「別に良い。早く出ていけ。」すると奴
はー礼してそそくさとでていった。親指が短くなっているので今にもカップ麺が落ちそうになっていた。まだ熱いヤカンに水を入れ、火にかける。ふと
三角コーナーを見ると野菜の残骸と、大きな骨つきの肉片が入っていた。なかなか旨そうな肉だったのに。少し残念に思いながら赤く染まったまな板を舐める。
なかなか美味なものだ。