「諸君らに集まってもらったのは他でもない。」
と、出で立ちは完璧。

ドレスコードとでもいうべきか。
いかにもな衣装は、損料屋で僕が借りてきた物である。


緊張感が漂っている空間に、あの人はただ酔っている訳じゃない。
仕組まれた事故、つまり殺人事件をこれからあの人が解き明かすのだ。



奴は、あの人の質問に対して、
「そんなことに答える必要あるのか?俺が答えなきゃいけない理由が見当たらない。」
と返答を渋り拒絶を繰り返す。


これは嘘を付く時のサインということは、僕にだって分かる。

それと。
そんなことでは、あの人はめげないことも。




「それでは、お答えできないならこちらから。」
と、自信に満ちあふれた表情で、クローズドサークルのように奴の退路を塞いでいく。





『失敗などということを、今までに一度たりともしたことがはないさ。出来なかったという発見をしただけだよ。』
と言い切った時の様に。



進む。
あの人は、僕が創った道を引き返したりしない。


『死んだ人を悪くは言いたくないけど・・・。』
と、捜査が振り出しに戻ったとしても。


あの人の頭脳と、
僕のサイドキックで、
スキュタレー暗号のように、
まるっと補完(アモーダル)





『一番信じたくないことでも、それが真実という可能性からは目を背けたくない。』
と言った、あの人の横顔が格好良すぎて、
悔し過ぎるので、


『5分だけでいいですから、話を聞いてくれますか?』とあの人は毎回言うのだけれど、
『5分で終わった試しがない』と、
わざとけちをつけたかった。




僕が心の中で毒付いてみている間にも、
次々と表れる奴のメイラード反応に、
解決(グラバー)も、もう少しだとほくそ笑んだ。