……って、あれ?

私から離れてくれない比呂さんの視線に、私は首を傾げる。


「あ、あの……?」

「ん?」

「……そ、そんなに見られたら緊張します……」


いつもなら私を少しからかった後は、その手に持つ雑誌に目線を戻すのに。

いつもとは違う私から離れない視線にドキドキと鼓動が速くなっていく。


「……明里(あかり)が何考えてるのかなーって思って」

「えっ?何って……べ、別に何も……」

「そうなの?俺のことで頭がいっぱいになってくれてると思ったんだけどな」

「!!!」


比呂さんはニヤと意地悪な笑みを浮かべる。

や、やっぱり、今日の比呂さんはどこか違う気がする!

頭のネジが一本か二本、どこかにいっちゃった!?

ネジを吹っ飛ばしちゃうような、新たに開発されたらしい“からかいスイッチ”がまだ入っているのかもしれないと思いつつ、ネジが外れてない“素”のままの私は本当のことを言うのが恥ずかしくて、曖昧に答える。


「そ、そんなこと」

「……ないの?」

「え、えと……」

「ないんだ?…………ふぅん。そっか……それは残念だな」

「え?」

「仕方ないね……」


はぁ、と比呂さんが目を伏せて溜め息をつく。

え?何か怒らせちゃったのかな……?

次は怒りスイッチ?