あたしはそれだけ言うと、走りだした。 どこだか分からない場所。それでも、逃げる以外の選択肢がなかった。 理沙の呆然とした顔が、あたしの視界にちらつく。 あたしは頭を大きく振り、涙を止める。 一度止めた涙は、約束の話をすると、また流れ出してしまうみたいだ。 「理沙・・・、ごめんね」 あたしは、届かない謝罪の言葉を呟き、携帯電話を取り出す。 震える手で、ボタンを押していく。 「もしもし、古田君・・・?あたし、向井ゆきです・・・」