小さな呟きだったにも関わらずビクゥッ!と肩を揺らして反応したその人は、恐る恐る……といった様子でこちらへ顔を向けた。
ツンツンと跳ねた髪と赤い瞳、なにより小学生と間違えそうなほど小さな体躯……。
「やっぱり。リョウ先輩だ」
「え、どこどこ?……あー本当だ!」
私の発言に反応したリタさんがリョウ先輩を見つけ、そちらへと歩いていく。席見つけるんじゃなかったの?
仕方なくその後ろについていくと、陰になっていて見えなかったもう一人が挨拶をしてきた。
「やぁ、リタ。……それにセリナさんも」
「……サクヤ先輩」
パフェのスプーンを握ったまま固まっているリョウ先輩の横で、穏やかに笑うサクヤ先輩が会釈する。
私も会釈を返しながら、目を凝らしてサクヤ先輩の魔力を伺った。
体を巡る赤い魔力には、どれだけ注視しても黒い線なんて入っていなかった。
(よかった、無事に負の魔力は回収できたみたい)
私は心の中で安堵しながら、サクヤ先輩に促されて正面の席に座る。

